下肢静脈瘤について
下肢静脈瘤は、がんや心筋梗塞ほど世の中に認知されている病気ではないため、いまいち理解しにくいのではないでしょうか?
しかし、病名をひもといてみれば非常に単純だとわかります。
足(下肢)の血管(静脈)がこぶ(瘤)のようにボコボコしている病気なのです。
実は、名前を知らなくても、たくさんの方が日常で目にしているはずです。
なぜなら、がんや心筋梗塞のように命に関わる病気ではない反面、目に見えない病気ではなく、はっきりと外から見てわかる病気だからです。
そのため、すでに3500年前のエジプトを皮切りに、インド、中国、ギリシャなどで古くから診断・治療されてきた、歴史の深い病気なのです。
では、下肢静脈瘤とは一体どのような病気なのでしょうか?
下肢静脈瘤によりどんな事が起こりますか?
まず症状から言えば、足がだるい、重い、つる(こむら返り)、むくむ、痛い、かゆい、ほてるなどが挙げられます。
膝の痛みが静脈瘤からくることもあります。さらに重症になると、足の色が茶色や黒色などに変化していきます。静脈瘤の血液が固まって炎症を起こすことで、激しい痛みを伴うこともあります。
そして更にひどくなると、ごくまれですが、皮膚がただれてその内側がむき出しになってしまう潰瘍という状態になります。静脈瘤を治療しても、一度皮膚の色が変化したあとでは、多くの場合その色は残ってしまいます(潰瘍自身は治ります)。
なぜ下肢静脈瘤になってしまうのか?
血管には、栄養たっぷりの血液を心臓のポンプ作用によって身体のすみずみまで運ぶ”動脈”と、全身の古くなった血液をふたたび心臓に戻す”静脈”の2種類があります。この病気は、その”静脈”の異常により引き起こされるのです。
足の血液が心臓に帰るのは非常に大変です。なぜなら、足から心臓まで”高さ”があるからです。
つまり、足の血液は静脈を通って、重力に逆らいながら、まるで”鯉の滝登り”のようにせっせと心臓まで登っていかなくてはいけないのです。
それを助けてくれるのが、静脈の中にある“弁(べん)”という存在です。
この弁は、手を合わせたいわゆる“合掌”のような格好をしており、図のように、心臓に向かって流れるときは開いて、重力に負けて足に戻りそうな血液は、弁を閉じることにより一方通行になり、逆流を防いでくれるのです。
これを繰り返すことにより、心臓に無事帰っていきます。しかしこの弁が壊れて、しっかりと閉じなくなってしまうと、重力に負けた血液は足に逆流してしまいます。そして逆流した血液によって足の静脈が膨れてしまい、様々な症状を引き起こすのです。

